炭素浸炭・窒化・ショットピーニングの違い

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金属表面の硬化処理で用いられる炭素浸炭、窒化、ショットピーニング。各手法のメカニズム・効果・適用用途の違いを技術的に解説します。

1. 熱処理の目的と分類
機械部品に対して施される熱処理の目的は、主に以下の通りです。
- 表面硬度の向上
- 耐摩耗性の強化
- 疲労強度の向上
- 耐腐食性の改善
これらの目的を達成するために、表面改質処理と呼ばれる技術群が存在し、代表的なものに炭素浸炭(Carburizing)、窒化(Nitriding)、\-\-ショットピーニング(Shot Peening)\-\-があります。それぞれ異なるメカニズムで材料特性を向上させるため、適切な選定が求められます。

2. 炭素浸炭(Carburizing)の特徴
炭素浸炭は、鋼材を\-\-炭素を含む雰囲気中で高温加熱(約900〜950℃)\-\-し、表面に炭素を浸透させてから急冷する処理です。

■ メカニズム
鋼の表層部に炭素原子を拡散させ、焼入れによって硬化層を形成します。内部は靭性を維持しながら、表面の硬度と耐摩耗性を向上させることができます。

■ 特徴
- 処理温度が高いため、熱変形のリスクがある
- 処理時間が長く、生産コストが高め
- 硬化層の深さは比較的深く、0.5〜2.0mm程度が一般的
- ギヤ、シャフト、カムなど、高い表面硬度が求められる部品に適用されます

3. 窒化(Nitriding)の特徴
窒化は、鋼材を窒素を含む雰囲気中で中温(500〜600℃)加熱し、表面に窒素原子を浸透させて硬化層を生成する方法です。

■ メカニズム
窒素が金属表面に侵入し、鉄窒化物や合金元素の窒化物を形成します。これにより、表層部に高硬度な層を生成します。

■ 特徴
- 処理温度が比較的低いため、寸法変化が少ない
- 硬化層は炭素浸炭より浅く、0.1〜0.6mm程度
- 耐摩耗性、耐疲労性、耐食性に優れた性能を発揮
- モールド部品、スピンドル、空圧シリンダなど、高精度が求められる部品に向いています
- 通常、窒化鋼や合金鋼が好適材料となります

4. ショットピーニング(Shot Peening)の特徴
ショットピーニングは、金属表面に微小な鋼球(ショット)を高速で衝突させることにより、表層部に圧縮残留応力を導入する機械的表面改質法です。

■ メカニズム
プラスチック変形を誘発し、圧縮残留応力層を形成します。これにより、表面割れや疲労破壊の発生を抑制し、疲労寿命を延ばします。

■ 特徴
- 材質を選ばず、幅広い金属材料に適用可能
- 熱処理ではなく、冷間機械処理であるため寸法変化がほぼない
- 表面粗さが増すため、仕上げ精度が求められる場合は注意が必要
- ばね、ギヤ、航空機部品、自動車エンジン部品に多く使用されます
- 他の熱処理と併用することで効果を相乗的に強化することもあります

5. 適用選定の考え方
どの処理を選ぶかは、部品の用途、寸法公差、耐摩耗性や疲労強度の要求レベル、コストと処理後の工程を総合的に判断して決定します。
- 表面硬度を深く確保したい → 炭素浸炭
- 寸法精度を維持したい、耐腐食性も必要 → 窒化
- 疲労強度やクラック抑制を重視 → ショットピーニング
また、炭素浸炭+ショットピーニングのように組み合わせることで、機械的強度と疲労特性を両立させる設計も一般的です。

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