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CNCの停止を未然に防ぐ——工作機械モーター振動のしきい値設計と保全KPI

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CNCの停止を避ける鍵は、P-F曲線※でいう「P点」より前に兆候を数値で捉えることです。工作機械は仕上げ品質と寸法精度が命。ISO 10816/20816※の一般的なゾーンより厳しい社内しきい値が求められます。タイでは雨季の高湿・粉塵環境※、EEC※での量産要求、指定工場※のエネルギー管理の流れが重なり、突発停止とエネルギーロスの同時最小化が実務テーマになりやすい状況です。

私たちは、まず「何を守るか」を定義します。寸法・面粗さ・工具寿命か、生産タクトか。目的が定まれば、振動を“機械を守る値”ではなく“品質と稼働率を守る値”として設計できます。ここが出発点です。

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■ なぜ「許容していた振動」が停止を呼ぶのか
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根本には、芯出し不良・不釣合い・緩み・ベルトやカップリングの偏摩耗、そして軸受の微小はく離が潜みます。工作機械では土台剛性や送り系の固有振動が重なり、サーボや主軸の制御帯域に励起が乗ると一気に面粗さ悪化やびびりへ波及します。雨季の高湿は微小腐食や潤滑劣化を促し、粉塵はシールを越えて軸受内部へ到達。結果として、RMS速度※の“少しの上振れ”が、ある日を境に急勾配で増える現象につながります。

従来、「音と手感」での判断は職人技として有効でした。ただ、交代勤務や多国籍チームでは属人化の壁が高い。だからこそ、測定点・計測条件を固定し、同じ単位(mm/s)で語れる“共通言語”を持つことが重要になります。

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■ しきい値は二段構えで設計する
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推奨は「品質しきい値」と「保護しきい値」の二段構えです。

品質しきい値:ISOゾーン※より低めの独自基準。面粗さ・真円度の乱れや工具摩耗の初期兆候を逃さない設定。

保護しきい値:設備保護と安全停機を目的に、標準に整合する上限値。急上昇(勾配)監視も必須です。

監視量は、全体傾向を見るRMS速度(mm/s)※+原因切り分け用の周波数領域。軸受系はBPFO/BPFI※や高周波包絡※、回転系は一次成分とその高調波、取り付けや緩みは1×のサイドバンドや広帯域上昇に現れます。ベースラインは「据付直後」「主軸オーバーホール直後」「代表切削条件」で必ず取得。たとえ良好値でも、1~3か月で微増する機械は“増え方”こそがKPIです。

保全KPIの設計例として、①品質しきい値超過率(ライン別・班別)、②振動アラームから是正完了までの平均回復時間、③振動是正後の工具寿命改善率、④振動是正に伴う電力あたり除去体積(MRR/kWh)の改善率、を挙げます。いずれもCNCの停止回避とエネルギー管理の両立を可視化できます。

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■ 昭和測器の支援:最適な一台と、最初のコツ
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昭和測器では、現場の制約(防滴・配線距離・磁石ベース可否・I/O連携の有無)を踏まえ、主軸や送りモーター周辺に適切な測定点を設計し、必要十分なレンジと周波数帯を持つ振動計を選定します。最初は“測り過ぎない”ことが肝心。品質しきい値はベースラインの±差で、保護しきい値は設備仕様とISOゾーンを参照。これを一台で始め、成果を確認してから常時監視に拡張する段取りをおすすめします。

昭和測器株式会社として、私たちは「最適な一台を選ぶお手伝い」と「最初の使い方のコツ」の提供に徹します。現地の代理店とも連携し、センサー固定やケーブル取り回しの注意点、騒音源との干渉回避といった立上げの落とし穴を事前に共有します。量産のスピードが求められるEECの現場でも、数値という共通言語がチームの意思決定を速くします。昭和測器株式会社は、その最初の一歩をご一緒します。

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■ 最後に、私たちがお伝えしたいこと
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突発停止と品質ばらつきを同時に抑える近道は、“数値で語れる二段しきい値”と、それを活かす最適な一台の選定です。昭和測器株式会社に、まずは現場条件と目標KPIをお聞かせください。

📩 記事下のEMIDASフォームからお問い合わせいただくか、PDFをダウンロードしてご確認ください。

■ Download (PDF)
👉 MODEL-1332B:「据付直後やオーバーホール後のベースライン測定に」 (無料ダウンロード)
https://prime.nc-net.com/105994/ja/catalog/detail/7283
👉 MODEL-2502:「振動を常時監視し、KPIに直結させるために」 (無料ダウンロード)
https://prime.nc-net.com/105994/ja/catalog/detail/7284
👉 MODEL-2590C:「現場の制御盤でアラーム表示し、停止を未然に防ぐために」 (無料ダウンロード)
https://prime.nc-net.com/105994/ja/catalog/detail/7535

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【監修】昭和測器株式会社 営業部 振動計測アドバイザー
・据付直後のベースラインは「同じ姿勢・同じトルク・同じ回転数」で統一しましょう。
・アラーム値より“増え方”を重視。小さな傾きが、停止を一件減らします。
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【用語解説】
※P-F曲線:潜在故障(P)から機能停止(F)までの時間軸で劣化進行を示すモデル。
※ISO 10816/20816:産業機械の振動評価基準。主にベアリングハウジングなど非回転部でのRMS速度で評価。
※RMS速度(mm/s):振動エネルギーを表す代表値。全体傾向の監視に用いる。
※EEC:Eastern Economic Corridor。タイ東部の産業開発地域。
※指定工場:エネルギー管理実施を義務づけられた工場類型。
※BPFO/BPFI:転がり軸受の外輪/内輪通過周波数。欠陥診断の指標。
※高周波包絡:高周波帯の衝撃成分を包絡処理して微小欠陥の検出感度を高める手法。

【参考文献】
- ISO 20816-3:2022 概要(産業機械の振動評価と適用範囲)。
- ISO 10816-3:2009 背景資料(評価基準と測定部位の考え方)。
- 工作機械は一般機械より低振動が望ましいとの実務的解説。
- タイの雨季(5–10月)と降雨・湿度の基礎データ。
- タイの相対湿度動向に関する近年の学術分析。
- タイの指定工場・建物に対するエネルギー管理義務の条項(英訳)。
- エネルギー管理制度の運用解説(資料)。
- EECの投資促進とインセンティブに関する近年の発表。
- EEC経済レポート(2025年Q1)サマリー。
- 転がり軸受の故障周波数に関する基礎解説。


(作成日 : 2025-09-10)

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