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ポンプ・ファンの“異音の前兆”を数値で管理:現場が決めるしきい値とアラーム設計

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高温多湿・粉じん・雨季の負荷変動。タイの製造現場で回転機の保全を担当する皆さまが抱える環境要因は、振動トラブルの増幅要素になりやすい条件が揃っています。とくにポンプや送風ファンのモーターは、ラインの連続稼働と直結し、突発停止のインパクトが大きい設備です。

本稿では、現場担当者が実務で使える視点に絞り、「異音が出る前」に数値で兆候を捉え、装置・用途ごとに“自分たちの基準”を設計する方法論を整理します。背景には、EEC周辺での回転機メンテナンス需要の拡大や、データセンター/HVACの可用性要求の高まりがあります。これらの状況では、感覚ではなく数値の“共通言語”が保全判断の軸になります。

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■ なぜ“異音”まで待つと手遅れになるか
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異音は、軸受※やカップリングのダメージが進んだ最終段階で表れやすいサインです。実際の劣化はもっと前、アンバランス※・芯ずれ※・緩み※・ソフトフット※・共振※といった一次要因の組合せとして始まります。さらにインバータ(可変速ドライブ)※の普及で回転数が広範に変化するため、従来の定速前提の点検間隔や“経験則の音”だけでは、初期の異常域を見落としやすくなります。
また、ベアリングの潤滑悪化やケーシングの締結力低下は、総合振動(RMS)※の微増→一定周期の変動→高周波成分の増加という順序で進むことが多く、音より先に「数値のパターン変化」に痕跡が残ります。だからこそ、音の発生を待たずに、早期の“数値の違和感”を拾う仕組みが必要です。

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■ しきい値は“規格の数字”ではなく“自分たちの現場値”で決める
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ISO 10816/20816※のゾーンは出発点に便利ですが、機種差・据付条件・運転点が多様な現場では、そのままでは過大・過小に働くことがあります。おすすめは次の設計思想です。

基準線(ベースライン)を確立する:据付直後または整備直後の安定運転で、RMS※を中心に正常レンジの分布を取り、季節差(雨季/乾季)と運転点(流量・回転数)の影響を把握します。

二段階アラームを使い分ける:早期注意(Trend)と要対応(Action)を分け、トレンド側は“平常からの偏差”で、アクション側は“絶対値+持続時間”で判定します。イベントの瞬間最大※だけでなく、持続と再現性を重視するのがコツです。

運転点連動を前提にする:VSD※や多段流量運転では、回転数帯ごとに基準線とアラームを切り替えます。特定帯域でのみ現れる共振※や機械的クリアランスの影響を、運転ログと合わせて“帯域別ルール”に落とし込みます。

P-F曲線※で早めに線を引く:検知(P)から機能喪失(F)までの猶予を、部品調達や人員確保に必要な日数から逆算し、Trend閾値を“早め”に設定します。結果として不要な停止が減り、計画保全の自由度が高まります。

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■ 昭和測器のアドバイス:装置と目的に合った“最適な一台”と、最初の運用設計
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昭和測器では、ポンプ・ファン・ブロワ・コンプレッサなど回転機の特性を踏まえ、据付条件・回転数レンジ・温湿度環境・清掃頻度といった現実の制約から逆算して、現場に合う振動計の選定をお手伝いします。過剰な多機能に偏らず、RMS中心の異常検知と帯域別の傾向把握が確実に回る構成を第一にご提案します。

また、昭和測器株式会社として、初期導入時は「ベースライン採取」と「二段階アラームの初期値」の作り方を具体的にアドバイスします。HVACのファン群やチラー循環ポンプのように台数が多い設備では、代表機の監視→モデル化→横展開の順に負担を抑えた立ち上げが効果的です。EEC周辺で増える連続操業ラインや、可用性重視のデータセンター設備についても、現地代理店と連携しながら“最初の使い方のコツ”まで伴走します。

昭和測器株式会社の役割は、あくまで最適な一台の選定と運用設計の初期ガイドです。既存のインバータやBAS/SCADAとの高度な連携が必要な場合は、現地のSI/保全会社と連携し、お客様の運用に無理なく馴染む形を一緒に整えます。結果として、“異音の前兆”を現場の数字で早く掴むことができ、突発停止の回避と計画保全の前倒しが現実になります。

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■ 最後に、私たちがお伝えしたいこと
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異音を待たず、“現場の数値”でしきい値を育てていくことが、最短で止めない現場につながります。昭和測器では、装置と目的に合う最適な一台の選定と、はじめの設計づくりを責任をもってお手伝いします。

📩 記事下のEMIDASフォームからお問い合わせいただくか、PDFをダウンロードしてご確認ください。

■ Download (PDF)
👉 MODEL-1332B:「据付直後のベースラインを確立し、異音より先に小さな兆候を捉えるために」 (無料ダウンロード)
https://prime.nc-net.com/105994/ja/catalog/detail/7283
👉 MODEL-2502:「振動を常時監視し、現場独自の二段階アラームを実現するために」 (無料ダウンロード)
https://prime.nc-net.com/105994/ja/catalog/detail/7284
👉 MODEL-2590C:「制御盤で数値と警報を共有し、ファン群やポンプ群の早期対応を支援するために」 (無料ダウンロード)
https://prime.nc-net.com/105994/ja/catalog/detail/7535

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【監修】 昭和測器株式会社 営業部 振動計測アドバイザー
・ベースラインづくりは“代表機から”。数字が安定したら横展開が最短ルートです。
・アラームは“二段階+持続時間”。音ではなくトレンドで、早く・静かに手を打ちましょう。
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【用語解説】
※軸受:回転軸を支持する部品。摩耗・潤滑不良で振動や発熱が増える。
※アンバランス:回転体の質量偏り。回転数に比例した振動が増える。
※芯ずれ:モーターと負荷の中心のずれ。軸受負荷増や異常加速度の原因。
※緩み:締結部の弛み。広帯域の振動上昇や打音様成分の増加を伴うことがある。
※ソフトフット:据付面の不整合で脚が浮く状態。芯ずれ・軸受負荷の誘因。
※共振:機械の固有振動数付近で振幅が大きくなる現象。
※可変速ドライブ(VSD/インバータ):回転数を柔軟に制御する装置。運転点ごとの基準・アラームを要する。
※RMS(総合振動):振動のエネルギーの代表値。異常の早期検知に有効。
※瞬間最大:ピーク/ピーク・トゥ・ピークなどの最大振幅指標。継続性のないスパイクは誤判定要因になる。
※ISO 10816/20816:回転機械の振動評価に関する国際規格。設備条件に応じた適用が必要。
※P-F曲線:劣化の検知点(P)から機能喪失(F)までの時間関係を示す考え方。

【参考文献】
タイ自動車産業の足元動向(EV販売拡大・生産推移の報道, 2025年8月)。
回転機メンテナンス需要の地域動向(ラヨーンにおけるサービス拠点新設, 2024年)。
タイにおけるデータセンター成長と冷却/HVACの拡大トレンド(業界メディア, 2025年)。
バンコク/タイのデータセンター投資計画(ハイパースケーラー関連報道, 2025年)。
HVACでのコンディションモニタリング適用(グローバル技術解説)。
タイ語での振動監視・測定の基礎解説(ローカル情報)。
タイ市場の動バランス/人材課題に関する市況レポート。


(作成日 : 2025-08-29)

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