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モーターはなぜ突然止まる? P-F曲線の“P点”を振動データで捉える予知保全の実践

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EEC(チョンブリー/ラヨーン)では、雨季の豪雨対策でポンプ・送風・冷却系の連続運転が常態化し、三相モーターの軸受やカップリングへの負荷が高まりやすい状況です。技術者にとっての課題は、P-F曲線※でいう「P(潜在故障)」の発生点を、ISO 10816※に整合したKPIで再現性高く掴むこと。誤検知を避けつつ、潤滑劣化・芯ずれ・不釣合い・ゆるみといった典型的モードを、電源再投入なしで運転中に同定できる仕組みづくりが本稿の焦点です。

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■ 典型モードを数値で切り分ける——軸受・芯ずれ・不釣合い
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潜在故障の初期は、総合振動(mm/s RMS※)の微増として現れます。ここで「何が起点か」を見誤ると対策が遠回りになります。

・不釣合い:回転一次(1×)成分が卓越。速度域で上昇し、位相は一様。
・芯ずれ:1×に加え2×が顕著。軸方向の成分も相対的に増加。
・転がり軸受の劣化:高周波帯にエンベロープで繰返しピーク(BPFO/BPFI※)。負荷変動で強弱。
・機械的ゆるみ:サブハーモニクスやブロード化。
総合値のトレンド、周波数スペクトル(FFT※)、包絡解析の三点を揃えると、P領域の同定が安定します。雨季の湿潤環境では潤滑の膜厚が下がり、軸受由来の高周波成分が先行する傾向があるため、モーター台数の多い設備では高周波監視を“先行指標”に置く設計が有効です。

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■ しきい値設計の勘所——ISO 10816+運転実態で二段構え
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ISO 10816は、機械群と据付剛性に応じて振動評価ゾーンを提示します。これを**上限(ハードアラーム)としつつ、現場実測の平均±ばらつきから運転基準(ソフトアラーム)**を設け、二段で運用するのが実務的です。

・立上げ後に30〜60分の定常帯をベースライン化。
・台数が多いラインでは群管理を採用し、箱ひげや偏差スコアで外れ個体を抽出。
・定期グリース後・芯出し後の戻り値をテンプレート登録し、整備品質のばらつきを可視化。
この枠組みなら、P領域のわずかな逸脱を“数字の会話”で共有できます。洪水・停電リスクが高い時期は、ポンプ群の負荷変動が大きくなるため、ソフト側は運転モード別に複数設定し、誤報を抑えるのがコツです。

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■ 昭和測器の役割——入門から群管理まで「最適な一台」を設計
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昭和測器株式会社では、ポンプ/送風機/冷却塔など回転機の実稼働を前提に、ISO 10816に沿った総合値+周波数解析を扱える計測器から選定します。携帯型での巡回監視から始め、必要に応じて常設ポイントを“要所だけ”増やす段階導入をご提案します。
昭和測器株式会社として、最初のKPI設計(総合値・高周波指標・群管理の偏差スコア)や、ベースライン取得の勘所をわかりやすくアドバイスします。現地の代理店とも連携し、EECの高湿・高負荷の運転実態に合う測定レンジや取り付け条件を一緒に整えます。
昭和測器株式会社は、“最適な一台を選ぶお手伝い”と“最初の使い方のコツ”に徹し、P領域の早期捕捉を日常点検へ落とし込みます。

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■ 最後に、私たちがお伝えしたいこと
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P-F曲線のPを逃さない仕組みは、停止ロスと無駄な電力を同時に削減します。まずは一台から、ISO 10816に沿ったKPI設計を私たちと始めてみませんか。

📩 記事下のEMIDASフォームからお問い合わせいただくか、PDFをダウンロードしてご確認ください。

■ Download (PDF)
👉 MODEL-1332B:「据付直後のベースラインを確立し、P領域の微小な変化を捉えるために」 (無料ダウンロード)
https://prime.nc-net.com/105994/ja/catalog/detail/7283
👉 MODEL-2502:「振動データを常時監視し、ISO 10816に整合したKPI運用に活かすために」 (無料ダウンロード)
https://prime.nc-net.com/105994/ja/catalog/detail/7284
👉 MODEL-2590C:「制御盤で数値と警報を共有し、群管理で外れ個体を早期に特定するために」 (無料ダウンロード)
https://prime.nc-net.com/105994/ja/catalog/detail/7535

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【監修】昭和測器株式会社 営業部 振動計測アドバイザー
・P領域は“高周波の微振動”が先に動きます。総合値だけでなく包絡も併用しましょう。
・整備後の戻り値テンプレート化が、誤検知を最小化する近道です。
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【用語解説】
・P-F曲線:潜在故障(P)から機能故障(F)までの時間軸で劣化進行を示す概念。予知保全の設計に用いる。
・ISO 10816:回転機の振動測定・評価のための国際規格群。非回転部での測定に基づき評価ゾーンを定義。
・RMS:実効値。時間波形のエネルギー量を表す指標で総合振動評価に用いる。
・FFT:高速フーリエ変換。時間信号を周波数成分に分解する解析手法。
・BPFO/BPFI:転がり軸受の外輪/内輪に起因する特徴周波数。エンベロープ解析で抽出されやすい。
・群管理:多数台の設備を「相対比較」で監視し、外れ個体を抽出する手法。

【参考文献】
ISO 10816-3:2009 概要(非回転部での測定に基づく産業機械の評価基準)。
ISO 10816-3:2009/Amd 1:2017(改正版の位置付けと適用範囲)。
ISO 10816-1:1995 概要(一般ガイドライン:評価手順と条件)。
CBM Connect「ISO 10816-1/10816-3/20816-1 の適用に関する考察」。
Acoem USA「ISO 10816-3 振動シビアリティ表の理解」。
iTeh(ISO 10816-3:2009 PDF 抜粋サンプル:定義と評価ゾーン要旨)。


(作成日 : 2025-09-09)

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