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溶融流動の科学:射出成形中のプラスチックの挙動を理解する
製品情報
Key Takeaways
• 溶融樹脂の流動挙動は、成形品の品質と成形安定性を決定する重要因子である。
• 分子構造や分子量は流動性に大きく影響する。
• 溶融樹脂は非ニュートン流体であり、せん断速度が上がるほど粘度が低下する「シアシニング」が起こる。
• 適切な温度制御は流動性を改善するが、過熱は材料劣化の原因になる。
• ファウンテンフローやゲート設計は、金型内の充填均一性に直接影響する。
射出成形における溶融樹脂の挙動を理解することは、製品品質を維持し安定した生産を行う上で必要不可欠である。流動挙動を正しく理解した工場は、成形条件を精密に設定でき、不良率削減、試作時間短縮、生産効率向上につなげることができる。本記事では、樹脂流動に関する主要な工学的概念を整理し、現場でのプロセス最適化に役立つ知識を提供する。
ポリマー分子構造と流動挙動
ポリマーは分子構造が異なるため、流動性にも大きな差が生じる。
• PP(ポリプロピレン): 直鎖構造で加熱時に流動しやすい
• PC(ポリカーボネート): 剛直な環状構造により、高温・高圧が必要
また、分子量も流動性に影響する:
• 高分子量: 機械特性は良いが、流動しにくい
• 低分子量: 流れやすいが、強度が低下する
したがって、形状や流動要求に合った材料グレードの選定が重要である。
温度と樹脂流動の関係
バレルや金型の温度は粘度に直接影響する:
• 温度上昇 → 粘度低下 → 流れやすくなる
• 過剰加熱 → 材料劣化(変色、機械特性低下)
そのため、各ゾーンの温度プロファイルを精密に制御することが必要である。
金型内の流動パターン(ファウンテンフロー)
ランナーやゲートからキャビティに樹脂が流入すると、ファウンテンフローが発生する。
• 流動中心部の樹脂が前方へ押し出される
• 壁面近くの樹脂は減速し、外側へ押し広がる
この挙動は以下に影響する:
• 表面品質
• ウェルドライン位置
• 充填の均一性
よって、ゲートの形状と位置 の設計は、安定した流動を得るための重要要素である。
まとめ
樹脂流動の理解は、高品質な射出成形を実現する基礎である。分子構造、せん断挙動、温度条件、流動パターンを適切に制御することで、不良削減、工程安定化、金型寿命延長を実現できる。
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❓ FAQ
Q1: 溶融樹脂が非ニュートン流体と呼ばれる理由は?
A: 粘度が一定ではなく、せん断速度に応じて変化するため。
Q2: 射出速度を上げると流動が改善されるのはなぜ?
A: せん断速度が上昇し、シアシニングにより粘度が低下するため。
Q3: 温度が高すぎるとどんな問題が起こる?
A: 材料劣化、強度低下、変色などが発生する。
📚 Glossary
シアシニング(Shear Thinning): せん断速度上昇に伴い粘度が下がる現象
非ニュートン流体(Non-Newtonian Fluid): 粘度が一定でない流体
ファウンテンフロー(Fountain Flow): 中央部が前方へ進み、壁面部が外側へ押し出される流動
分子量(Molecular Weight): 強度と流動性を左右するポリマー特性
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