高速度工具鋼 (High Speed Steel)とは?|なぜ今でも切削工具の主要素材なのか

製品情報

主なポイント
• 高速度鋼(HSS)は600〜650°Cでも62〜67 HRCの硬さを保持する。
• W・Mo・Cr・Vが炭化物を形成し、耐摩耗性と耐熱性を向上させる。
• M2、M35、M42、T1などの代表的なHSSは用途により使い分けられる。
• 適切な材質選定・切削条件・クーラント・再研磨が工具寿命を大幅に延長する。
•超硬工具が必要な場面はあるが、HSSは依然としてコスト効率に優れる。

高速度鋼(High Speed Steel:HSS)は、切削時に発生する高温下でも高い硬さを保持できるため、金属加工工具に広く使用されている。ドリル、エンドミル、バイトなど、産業全体で重要な役割を担う工具材料である。

HSSは高速切削中に600〜650°Cに達しても硬さを失わないよう開発された材料である。タングステン、モリブデン、クロム、バナジウムなどの合金元素が硬質炭化物を生成し、摩耗抵抗を高め、62〜67 HRCの硬さを維持する。
HSSの利点には、一般炭素鋼より2〜4倍速い切削能力、長い刃先寿命、再研磨可能による経済性の高さ、多用途性などがある。

代表的なHSSの種類
• M2(SKH51): 一般用途向け。コスト・靭性・硬さのバランスが良い。
• M35: Co 5%を含み、高温硬さが向上。ステンレス鋼などの難削材に適する。
• M42: Co 8%で耐熱性が最も高く、重切削に向く。
• T1: 高タングステンで高い硬さを持つ。価格は高めで専門用途向け。

正しい使用ガイドライン
被削材に合ったグレードを選定し、適正な切削速度と送り量を設定する。熱抑制のためにクーラントを使用し、刃先の摩耗が進む前に再研磨する。

よくある誤解
HSSはすべての材料を切削できるわけではなく、極めて硬い材料には超硬工具が必要。クーラントなしでも良いという考えは誤りで、過熱で摩耗が急増する。価格が高ければ常に最適というわけではなく、M2で十分な場面は多い。

HSSは耐熱性・靭性・汎用性に優れ、依然として多くの加工現場で重要な材料である。グレード特性と適正条件を理解することで、工具寿命を延ばし、より高度な切削知識へ進む基礎が得られる。

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❓ FAQ
Q1: HSS と超硬工具の違いは?
A: HSSは靭性が高くコストも低い。超硬工具はより硬く、5〜10倍の切削速度に対応する。

Q2: M2 と M35 の違いは?
A: M35はCo 5%を含み、M2より2〜3 HRC高い硬さを持ち、難削材向け。価格は30〜50%高い。

Q3: クーラントは何を使うべき?
A: 重切削には切削油、一般加工にはエマルションが適する。

📚 Glossary
• Carbide(超硬): 高硬度の切削工具材料
• HRC: ロックウェルC硬さ
• Cobalt(コバルト): HSSの耐熱性を高める元素
• Emulsion(エマルション): 水溶性クーラント

📖 Reference
• AISI M-Series および T-Series Standards
• JIS G 4403
• 世界的切削工具メーカーの技術資料
• ASM Handbook Volume 16: Machining

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Updated: 2025-12-02

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